無為無策のうちに過ぎていく3ヵ月目。次の4ヵ月目もこのままでは埒が明きません。自分たちなりに結果を踏まえて改善を続けても、内覧客の精度が低いままでは状況は変わるはずもなく。これまでを振り返ってみて、そもそもこれからどのように売っていくつもりなのか仲介業者に疑問をぶつける会議を開きました。
私たちが感じた仲介業者の違和感
土地購入にあたって組んだローンの条件のひとつが融資実行後、半年以内にマンションを売却することでした。それまでにはまだ時間はあるとはいえ、これまでの内覧客の質を見ると明らかに他社の当て馬になっていました。当て馬とは、本当に営業マンが売りたい物件より少々高めのものを見せて、次に納得感のある本命の物件を見せる。そんな駆け引き用の物件として使われる行為です。
それでも改善策も対応策も具体的に提示されないまま。これで4ヵ月目に突入するのは不安しかありません。そもそも、夫が「この人」と感じた業者に依頼したのに、なぜこんなに不満が溜まってしまったのでしょうか。我が家が感じた違和感はこのような状況があったからでした。
内覧に8割同席していない
3ヵ月も内覧をやっていると、素人目にも本当に欲しくて見に来たのか、なんとなく来てみた程度なのかはわかります。それでも仲介業者に指摘すると「まずは見てもらわないと始まりませんから!」と言うばかり。ところがその張本人は、内覧に立ち会わないのですよ…。
ほかの物件のご案内が被ってしまって行かれません!
契約と被ってしまって行かれません!
娘が熱を出してしまったので、会社を急遽休みますので同席できません。ごめんなさい!
他社が連れてきたとしても、本来ならば媒介契約をしている会社も内覧は立ち会うべきところ。それがこんな理由で立ち会いは毎度不在でした。
これでは内覧客の反応も見ていないので、対策も立てようがないわけです。加えて当て物件になっていることにすら気づけていませんでした。これも「以前来た、戸建てかマンションで迷っているっていうお客さんどうなりました?」と私が聞いてはじめて告白されました。
あー、あれなんですが…。まったく別のエリアで買ってたんですよ。ほかにもどんな物件に決着したか見ていくと、似たような状態で。どうやらこのマンションが当て物件になっていたようですねえ。
新型コロナの前には出せば飛ぶように売れていたエリアだけに、何もしなくても売れると思っていたのかもしれません。それにしてもちゃんと同席していれば、早い段階で当て物件になっていたことに気づけていたはずでした。気づいていたけど、客から詰められたら値下げすれば売れるくらいの感覚だったのかもしれません。
内覧客に連れてくるのは他社ばかり
専属専任媒介契約をしていたにも関わらず、内覧に連れてくるのはほとんど他社の仲介業者。肝心の営業マンからはロクに送客がないのです。やっていることといえば、毎週1回レポートを郵送してくるだけですが
引き続きがんばります!
と、毎週同じコメントが記載されるだけ。このマンションを売るために何をやっているのか、まったく見えませんでした。
自社の物件検索サイトに過剰な自信
当初、自社の物件検索サイトにだけ掲載されていた我が家。「SUUMOには載せないのですか」と聞くと、こんな答えが返ってきました。
うちのサイトは不動産を探している人の検索に強いので、ご安心ください!
夫も私もWEB業界の人間なので「そうですか! じゃあ大丈夫ですね」とはいきません。自然検索では上位に来るかもしれませんが、実際に家を探そうと思ったとき、テレビCMを投下しているSUUMOの知名度は軽視できません。サイト名でダイレクト検索されれば、当然広告を出しているのでTOP表示されます。それがうちのマンションへの誘引になるかというと、意味をなさないことを知っていました。
途中からはSUUMOへの掲載も始めましたが、間口を拡げる意味でも「この人で大丈夫かな」と不安になったものです。
「見てもらわないと始まらない」が口癖
明らかな冷やかし客にしか来ない状態が続き「来る内覧客の精度をあげて欲しい。もしくは事前にヒアリングをしっかりやって、全部連れてくるのではなく絞って欲しい」と再三お願いしても返ってくるのは同じ言葉でした。
いえいえ、まずは見てもらわないと始まりません! たとえほかの物件が目当てでついでに見にきたとしても、こっちを見たら気にいったということも珍しくありませんから!
こう言われれば「そんなもんかな」と思う人もいるでしょう。
理屈上はそのとおりですが、4000万台後半で出しているうちの物件を「3000万円台で探している」という人に見せてもハマるはずがないし、一戸建てかマンションかを迷っている人に見せて「ここに申し込みます」という人は、まずいません。そしてうちに来るのはそんな内覧客ばかりです。
有象無象を相手にするのではなく、せめてこのエリアで探している人や4500万前後で探している人に絞ってもらわないと、毎週末対応に追われる売主はたまったものではありません。
更新した月の頭に言い出した値下げ論
媒介契約は2ヵ月更新。私は不信感でいっぱいだったため、他社にできれば替えたいと思っていました。でも、夫がどうしても「もう一回だけ彼を信じたい」というので更新手続きをすることに。
すると今度は驚くことを言い出しました。
相場実績よりも高いことが廻し物件になっていた理由だと考えられるんですよね。これからはそうされないためにも、価格を思い切って数百万下げることを強くお願いしようと思っています。価格の絞り込みで4,500万の検索結果に入り込むためにも、ここは思い切って4,300万に大きく値下げをしましょう!
たしかに、これまでの実績ベースより高めで出している我が家。ただ、この価格は他社の査定でも同じ額。異様に高いわけでも無謀でもありません。そもそも売り出し価格の決定は、この仲介業者が成約率が高いレンジとして出した額のアッパーでした。掲載開始から4ヵ月未満で数百万の値下げはありえません。
私は実家が地主稼業で、かつ生まれ育った地元。さらに伯父がマンションデベロッパーにいるので、これでも不動産価格には敏感だし、地主仲間との情報交換も盛んです。売り出し価格が決してチャレンジングすぎることはないと、セカンドオピニオンの助言も受けていました。
廻し物件を回避するために値下げるとか「( ゚Д゚)ハァ?」という状態。まして高すぎるというのは、自分の値付けを否定したも同然です。早く売りたくて焦る夫は、心が一気に値下げへ傾きだしました。「時期を見て判断します」と返事を保留して電話を切り、いよいよここから私の怒りが爆発しました……。
「恥じ入るばかりです」という仲介業者の弁
ひとまず値下げを感化されたように主張する夫を落ち着かせ、翌週アポをとって仲介業者のオフィスへ出向きました。てっきり値下げ価格の相談に来たものと思っていた仲介業者。「次の契約は更新しません。他社に依頼します」とはっきり言い切った私に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で営業マンは用意していた値下げの説得資料をそっと閉じました。
それからは、前述のような対応への不満をぶちまけました。特に内覧に同席もせず、どうやって買い主の反応を見て対策を練るのか、なぜ他社ばかりが送客してくるのか、値下げしか策がないのかといったことを淡々と詰めました。
実は業界でやってはいけないタブーですが、お断りしていた他社の仲介業者が2週間に1回は「次の更新時にはぜひ、うちにやらせてください!」と私にコンタクトをしてきていました。それが不動産業者の間では大きなトラブルになる行為だとしても、そこまで連絡してくる熱意と比べると専任なのに内覧にすら来ないのはやる気がないとしか考えられませんと伝えました。
黙って神妙な面持ちで聞いていた仲介業者。
恥じ入るばかりでございます……。
と繰り返しました。事実、新型コロナの影響で人気のあったマンション売買が頭打ちになり、戸建てが活発化している市場です。売主として難しい注文を付けているのもわかっていますが、彼は最初の仲介業者を選定する際の熱意と真摯な資料づくりに夫が惚れ込んで依頼した人。それだけに期待ハズレだし、とてもこのままでは二人三脚して売り抜けると思えません。
仲介業者の言い分と市場の状況
我が家がある地区はバブル期からマンションの開発が盛んで、作れば飛ぶように売れているエリアです。リーマンショックの頃までは新築というとファミリー向け物件は70~80平米が3800万円~が主流でしたが、ここ最近は東京都内と同じくファミリー向けでも60~65平米が7000万~。都内だとそれ以上ですから、都内で買えなかった人たちが流れてくることも多くあります。
そのため、我が家のような築10年の72平米3LDKは中古といえど、4000万円台後半は希少物件。出せばすぐに売れるのがここ数年の状況でした。特に我が家が売り出したときには、同じエリアに競合する物件がなかったのも強みでした。
そんな背景から販売を開始した物件ですが、新型コロナによる外出自粛の傾向やテレワークの普及でより郊外に広い家を求める人が増えたり、雇用や賞与など不安材料への懸念からこのエリアの不動産屋に来る人が激減。うちの後に売り出された人気シリーズのマンションも、通常ならすぐ売れるところすらも2ヵ月を経過していました。
社内や同業他社とも情報共有はしているんですが、そもそも家を探している人がいないんです。これまでにいた子供の入学時期に間に合うよう家を探す人がまったく動いていなくて…。そもそも5月に活発化する市場が今年は6月でしたし、読めないですねえ。
探している人がいないのに、売れというのは酷な話です。変則的な年なので読みにくいのもわかります。ただ、他社の内覧が多いことを考えると探している人がいない発言には懐疑的でした。とはいえ売らないことには彼も営業成績に響きますし、私たちも仲介業者の買取は避けるべき最終手段です。
そこで、これからできることを今一度双方で確認していくことにしました。
これからの対策を再確認する
自分たち側だけの不満を言っても仕方ありません。事実、これまでの販売実績ベースよりも強気の値付けをしていたのも間違いありません。そこで今一度、彼を信じて目下一番有効だろうとする値下げをまず行うことにしました。
彼は思い切って4300万円にすることを主張しましたが、中古の売買は値下げ交渉はつきもの。安く出してしまって、更に更にと引かれるのでは一戸建ての建築費用にも影響してしまいます。最後まで仲介業者は4500万円以下にすることを主張しましたが、退けて4680万円で仕切り直すことにしました。4500万円で希望物件がなければ絞り込みの範囲を拡げるだけの話なので、そもそも小刻みに下げることには懐疑的です。それこそ4680万で出ていても、自分の欲しい価格で指値をするくらいの気持ちの人が来てくれないと無駄な内覧が続くだけのように感じました。
そして次のことを確認し合いました。
- 内覧に来る人は事前にしっかり希望をヒアリングして、精度を高める
- 人が来るのを待つのではなく、既存顧客の掘り起こしをする
- 毎週1組連れてくるのではなく、特定の日に集中させる
実働に不安があった私は「SUUMOに載せた以外、実際問題なにをやって集客してるんですかね?」と聞くと、彼はこう答えました。
うちのサイトに登録している顧客に対して週に1回メルマガ打ってます。
そのメルマガの開封率や物件のクリック状況を聞いても、その場で回答がなく…。これでは配信しただけで読まれているかすらわかりません。
今月の動きによっては他社への乗り換えも念押しして、再度仕切り直しでスタートすることに。このまま掲載が続けば売れ残り物件の感も否めなくなってくるので、しっかりと結果を出してもらいたいと思っています。仲介業者に対しての不満は放置せず、場をつくってよりよい方向にいけるようざっくばらんに話しをしてみたというお話です。これが功を奏するとよいのですが…。